ストレートネックは首や肩の痛み・コリに留まらず、体のさまざまな箇所に影響をおよぼすとされています。
頭痛、眼精疲労、手・指のしびれ、背中・胸の痛み、頸椎椎間板ヘルニアなどの肉体的症状から、自律神経失調症など神経に至る症例、またはうつ症状などの精神疾患との関係性も認められています。
頸椎(けいつい)がまっすぐになってしまうことを、ストレートネックと言います。下の図をご覧ください。
首は本来、5kgほどの重さがある頭を支えるため緩やかに湾曲しています。しかしストレートネックの人は、頸椎がまっすぐになってしまっています。
頚椎の自然なカーブを「生理的湾曲」と言いますが、この形状が体の機能を生かす上で理に敵った状態です。つまりストレートネックの人は、骨が身体的な理に反してしまっていることになります。
首本来の緩やかなカーブが損なわれているため、頭の重みがダイレクトで首や肩の負担となってしまい、首・肩を始めとするさまざまな箇所への痛みや弊害を生んでしまうのです。
では、なぜストレートネックになってしまうのか? 次項ではその原因についてご説明します。
多くの場合ストレートネックは、日々の生活で首にかかる負担が少しずつ蓄積して形成されます。主な原因を大雑把にまとめると、「無理な姿勢のまま長時間過ごすこと」と言うことができます。
日常に潜む「無理な姿勢」の代表的な例は、うつむいてスマホを閲覧する姿勢、デスクワーク時の顎を前に突き出したような姿勢、また、高すぎる枕を使用しての睡眠姿勢も顎が前に突き出た状態となるため、首に大きく負担を強いることになります。
筋肉は長時間伸び縮みしないと伸縮性を失います。例えば長時間のデスクワークで首に負担をかけ続けた場合、首の筋肉が凝り固まってしまい、その結果ストレートネックとなってしまうのです。
次項からは、ストレートネックの症状についてご説明していきます。
ストレート「ネック」と言うだけあって、代表的な症状は首の痛みやコリです。多くの場合、首と直接筋肉がつながる肩にも痛みやコリが出てきます。
前述した通り、5kgほどの重さがある頭部を支えるため、首の筋肉は横になっているときを除けば常に働き続けています。
いわゆる「よい姿勢」の状態ならば首への負担は大きくありませんが、うつむき加減が大きくなるにつれて、首にかかる負担は増えていきます。
下の図は、角度ごとに首にかかる重量を表したものです。
0°の5kgは12ポンドのボーリング玉ほどの重さ。60°の27kgは65インチの大型テレビほどの重さです。例えば、60°のうつむき姿勢で1時間スマホを見ていた場合、約27kgの重量が1時間にわたって首にかかり続けることになります。これでは筋肉がこわばり、固まってしまうのも無理はありません。
筋肉が固く緊張した状態を「筋緊張(きんきんちょう)」と言います。筋肉が強張ると血管が収縮して血液の流れが悪くなり、血行が悪くなると首や肩に溜まった疲労物質や痛みを上手に排出することができず、神経を刺激して痛みやコリが生じると考えられています。またそれらは、首や肩の可動域の低下にもつながります。
(じりつしんけいしっちょうしょう)」などにもつながります。
心臓を動かす、体温を調整する、食べたものを消化する、汗をかく…。これらは意識して行っているわけではありません。すべて自律神経によってコントロールされているものです。
自律神経の乱れによって生じる「自律神経失調症(じりつしんけいしっちょうしょう)」は、とても恐ろしいものです。平たく言えば「自律神経の乱れにより起こる、さまざまな体調不良」のこと。特定の部位や器官の症状ではないため、症状の出方は多岐にわたり、精神的な不調にさえつながることがあります。
自律神経は、大きく次のふたつに分けることができます。
首には脊椎全体を通っている「交感神経」と、脳から走る「副交感神経」が通っています。交感神経は人が興奮しているときに優位に働く神経で、副交感神経は人が休息しているときに優位に働く神経です。
どちらか一方が働いていて、どちらか一方が休んでいるということはありません。常に両方とも働いているので、交感神経と副交感神経の働きを表す際には「〇〇神経が優位」という、少し分かりづらい表現が用いられます。
自律神経失調症の代表的な症状は、次の通りです。
●肉体的な症状
全身の倦怠感 | 疲れが取れない | 異常な発汗 | 関節の痛み |
不眠 | 頭痛 | 立ちくらみ | めまい |
目の疲れ | 耳鳴り | 息切れ | 過呼吸 |
吐き気 | 味覚障害 | 動悸 | 生理不順 |
下痢 | 便秘 | 頻尿 |
●精神的な症状
うつ症状 | 情緒不安定 | 被害妄想 |
などなど…
ストレートネックにより固くなった筋肉は両神経を圧迫し、「交感神経の働きを活性化」させて「副交感神経の働きを鈍く」します。すると自律神経のバランスが乱れてしまい、上記のように体のいたるところ、または精神に悪症状が出てしまいます。
※ 「自律神経失調症」は特定の病名または疾患名ではありません。交感神経と副交感神経のバランスが崩れた状態を意味する慣用表現です。本記事では複雑な言い回しを避けるため、あえて「症状」という言葉を用いています。
もうひとつ、ストレートネックが起因となって生じる恐ろしい病気があります。それは頸椎椎間板(けいついついかんばん)ヘルニアです。
人の骨の構造や名称は非常にややこしく、読み方も難しいので、下記に詳しくご説明いたします。
まず「脊椎(せきつい)」という骨があります。いわゆる「背骨」のことで、頭からお尻にかけて伸びる大きな骨です。
「脊椎」とは骨全体の名称で、ひとつひとつの骨のことを「椎骨(ついこつ)」と言います。
「椎骨」は箇所ごとに名称があります。上から「頸椎(けいつい)」「胸椎(きょうつい)」「腰椎(ようつい)」「仙骨(せんこつ)」「尾骨(びこつ」に分かれていて、それぞれに個数が決まっています。
さらに、椎骨と椎骨の間にはクッションの役割を果たす「椎間板(ついかんばん)」があります。首を曲げたり回したりできるのは、この椎間板が柔らかい組織であるためです。頸椎部分の椎間板が圧迫され、中にある「髄核(ずいかく)が飛び出してしまうことを「頸椎椎間板ヘルニア」と言います。
また頸椎椎間板ヘルニアは大きく2つのタイプに分かれていて、それぞれに「突出型」と「脱出型」と呼ばれます。
頸椎椎間板ヘルニアになると、さまざまな症状に悩まされることになります。重症ともなればその悪症状は、首や肩のみに留まりません。
●頸椎椎間板ヘルニアの代表的な症状
頭や顔の症状 | 頭痛、後頭部の痛み、側頭部の痛み、目の奥の痛み、眼精疲労、目の充血、めまい、耳鳴り |
首や肩の症状 | 首の痛み、肩の痛み |
胸や背中の症状 | 背中の痛み、胸の痛み |
手や腕の症状 | 上肢(上腕・前腕・手)の痛みとだるさ、手のしびれやむくみ |
下半身の症状 | 脚の痛み、足のしびれ、歩行障害、頻尿、失禁 |
軽度の症状としては首の痛みや肩コリ、軽い手足のしびれなどがあります。次第に首の可動域が減少して動きが制限され、肩や手や頭などの特定部位に激しい痛みが走ります。また症状が進むと、頭痛や目の奥の痛み、めまいや耳鳴りなどが発生するケースも見られます。さらに重症ともなれば、歩行障害や尿のコントロールに弊害が出てくるケースもあるようです。
前述した「首・肩の痛み」と「首・肩のコリ」は最も代表的なストレートネックの症状です。また「自律神経失調症」と「頸椎椎間板ヘルニア」は、特に恐ろしいケースとしてご紹介いたしました。
次項からは、上記以外で多くの人が悩みを抱えるストレートネックの症状をご紹介していきます。
重度の自律神経失調症や頸椎椎間板ヘルニアと比べると症状は軽いと言えますがが、放っておくと各箇所の激痛に苛まれたり、重症化して日常生活が困難になることさえあります。もしも当てはまる症状がある方は注意が必要です。
ストレートネックによる頭痛は、首や肩の筋肉が凝り固まってしまうために起きる症状です。
首の前部には「胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)」という筋肉があります。鎖骨から頭部まで繋がっている筋肉で、首を曲げたり回したりするときに働きます。また、肩にある「僧帽筋(そうぼうきん)」の一部である「僧帽筋上部線維(そうぼうきんじょうぶせんい)」は、直接頭とつながる筋肉です。
これらの筋肉が強張ると頭の筋肉も固くなってしまうため、「緊張型頭痛(きんちょうがたずつう)」や「後頭神経痛(こうとうしんけいつう)」などの頭痛に悩まされることになってしまいます。
後頭部には「脳幹(のうかん)」があります。多数の脳神経が集まっている器官で、体のバランスを保つ働きをしています。
ストレートネックにより首の筋肉が圧迫されて血流が悪くなると、脳幹に送られる血液量が不安定になります。これにより、めまいが引き起こされてしまいます。
首や肩の筋肉が強張ると、視神経にも影響が出ます。
「トリガーポイント」という言葉をご存じでしょうか? 痛みやコリ、しびれなどが発生している部分とは全く別の箇所に不快な症状を引き起こす部位を指す言葉です。そして、眼精疲労のトリガーポイントは、首や肩に多く存在しています。
下記は、首部の筋肉である「胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)」がトリガーポイントとなって痛みが出るポイントを表したものです。図の通り、患部は首であるのに目に痛みが出ることが分かります。
首コリや肩コリにも直接的な影響をおよぼす「僧帽筋(そうぼうきん)」は、背中上部の表層面に存在する筋肉です。
ストレートネックにより首や肩の筋肉が固くなると、僧帽筋にも悪い影響が出てしまい、背中の痛みやハリにつながります。
ストレートネックの状態は、首から背中にかけての筋肉を緊張させます。すると、体の表面を通る神経を圧迫することになってしまい、結果として指先や手や腕などにしびれを発生させます。
厄介なことに、これらの症状でレントゲンを撮るなどしても異常が見つかることはほとんどありません。痛み止めなどを処方されて経過を見ることになるケースが多いようです。原因となるストレートネックを改善しないと、症状が緩和されることはないでしょう。
また指先・手・腕のしびれは、前述した「頸椎椎間板ヘルニア」の病状とも重なります。異常を感じた場合は放置せず、首のストレッチや生活習慣の見直しをお勧めします。
ストレッチの方法は別の記事で紹介していますので、詳しくは下記のページをご参照ください。
胃の痛みを覚える症例の中に、胃食道逆流症(いしょくどうぎゃくりゅうしょう)と言うものがあります。胃酸などが食道に逆流することで、胃痛や胸やけや起こる症状です。
ストレートネックとは関係が薄いようにも思えますが、実は胃食道逆流症を患う人の多くは、姿勢が悪いことが多いようです。
ストレートネックにより首回りの筋肉が固くなることで、他の箇所を庇うように姿勢が悪くなり、その結果として胃食道逆流症を発症し、胃の痛みや胸やけにつながるという事例が出ています。
ストレートネックがうつ症状を引き起こす理由は、大きく2つあります。
ひとつは痛みやしびれが慢性化するため。やはり体のどこかしたに不快感を覚えると、気持ち的にも陰鬱になるものです。
もうひとつは、首周辺に集まる自律神経を物理的に圧迫するためです。背骨の中には「脊髄(せきずい)」と呼ばれる神経の塊があります。これを「中枢神経(ちゅうすうしんけい)と呼びます。中枢神経からは「自律神経(じりつしんけい)」などが体全体に伸びています。首に負担をかけ続けることで自律神経の機能が低下し、うつ症状を引き起こすと考えられています。
いずれにせよ、首周辺の負担とうつ症状には密接な関係があると考えられています。
ストレートネックが不眠症につながるロジックは、次の通りです。
物理的な痛みから神経への悪影響、そして寝姿勢。これらの問題は併発する可能性も多く、さらには不眠によって日常生活に弊害が出ることも考えられます。
いびきは鼻や喉を通る空気が狭い部分にぶつかり、振動を起こすことで発生します。
呼吸器の内、「鼻腔(びこう)」、「咽頭(いんとう)」、「喉頭(こうとう)」のことを「上気道(じょうきどう)と言い、ストレートネックにより上気道が狭くなってしまうことがいびきの原因となります。
ストレートネックを予防・改善するには、首回りを中心としたストレッチがお勧めです。
1日短時間でもよいので、首や肩を中心に筋肉をほぐす習慣を付けると、きっとストレートネックの症状を緩和させることができるでしょう。
ストレッチの方法は別の記事で紹介していますので、詳しくは下記のページをご参照ください。
前項でご紹介した通り、ストレートネックの予防や改善にはストレッチがお勧めです。だだし、継続しないと意味がありません。ダイエットや筋肉トレーニング、ランニングなどにも同じことが言えますが、継続的な体のメンテナンス習慣は、どうしても疎かになってしまいがちです。
そこで、「寝ながら首をストレッチできる枕」があればどうでしょうか? 睡眠は必ず毎日とるものですし、労力を要することもありません。
「コリ吉ロール」は、寝ながら首のストレッチができるよう画期的な工夫が施された、進化したタオル枕です。
硬材(2本の木の棒)と軟材(スポンジ)の構造によりタオル枕本来の「形が崩れやすい」、「柔らかすぎる」、「高さ調節に手間がかかる」というデメリットを克服し、かつ独自の構造で特許を取得した商品となっています。
ストレートネックにお悩みの方は、ぜひ一度お試しください。